漢の時代、北辺のとりで近くに住んでいた翁は馬を飼っていました。馬は駄馬でしたが翁はたいそう可愛がっており、馬も翁を信頼しているように見えました。
ところがある日、馬は遠くの湖の方へ逃げてしまいました。
翁「なんでやねん〜(泣)」
しばらくして、駄馬は戻って来ました。
翁「おお、帰ってきたんか。ええこや。おや?」
見ると駄馬はひとりで戻って来たのではなく、精悍な駿馬を連れているではありませんか。
爺「これはどないしたんや。うん、ええこやええこや」
やがて、この駿馬に爺の孫が乗るようになりました。駿馬は孫の言うことをよく聞き、孫はどんどん上手になりました。ところが…。
孫「痛い痛い!」
爺「どないしたんや」
孫「馬から落ちて落馬した〜」
爺「あ、骨が折れてるやないか」
爺「痛い痛い!」
爺「駿馬さえおらへんかったらこんなことにならへんかったのに」
そんなある日、門前に憲兵がやって来ました。
憲兵「あー、ごめん」
爺「なんですの?」
憲兵「おたくの孫だが、本来今日から兵隊に行ってもらうところ、骨折しているため免除になった」
爺「え、兵隊ゆうたらあの誰も生きて帰られへんゆう、あの戦争の?」
憲兵「という次第なのでよろしく」
憲兵が帰った後、爺は思いました。
爺「駄馬が逃げたときは、不幸やと思うたけど、駿馬を連れて帰ってきて幸せやった。その駿馬から孫が落ちて骨折したときは不幸やと思うたけど、そのおかげで兵隊に行かんでもようなった。不幸やと思ったらそれが幸福の種にもなるんやなあ」
事実関係は若干混乱していますが、劉安作「人間万事塞翁が馬」のお話でした。
誰かに話しちゃダメですよ。