アメリカが「次のG7に韓国を招待する」と言ったのは、6/1でした。
これに、韓国の文大統領は「参加」を即答したと報じられています。
私は韓国の知人から「一般的な韓国人にとって、ノーベル賞受賞とG7への参加は悲願だ」と聞いたことがあります。
もしそのとおりなら、アメリカにとって、文大統領が誘いに乗ってくることは明白だったといえるでしょう。
案の定、翌日の韓国各紙は「ついに先進国として認められた」という喜びのコメントが舞っていました。
一方で「しかし日本が韓国の参加に反対しているらしい」「追いつかれたのが悔しいのだろう」などのコメントが加えられるのも韓国らしいと感じました。
実際、日本には韓国の参加を懸念する声もあったそうです。
しかし、それは、大方の予想に反して親中・親韓の政治家や要人からだったそうです。
その理由は後で触れることにします。
私は、直感的に、韓国へのアメリカのG7招待を「アメリカの仕掛けたワナだ」と感じました。
と同時に、「やっちゃったな、文大統領」と友人でもないのに呟いてみたりしました。
そうしたら、7/14にアメリカから次の矢が飛んできたました。
「中国通信企業5社と取引しているところや、取引先がこれらの企業と関係している場合は、アメリカ政府の調達対象から排除する」というのがそれです。
この一文は「アメリカ政府の」となっているので、一見、民間取引は対象外に見えます。
しかし、この政策の本当のポイントは「取引先がこれらの企業と関係している場合」というとこにあります。
つまり、自社だけでなく、自社の取引先が中国通信企業5社と取引している場合も、排除対象にするというわけです。
しかも、ズルいことにその取引先の範囲が明示されていません。
排除すべきなのが直接の取引先までなのか、途中に何社も経由した先がリストに挙げられている企業と取引している場合もアウトなのかがわかりません。
そして、この仕掛けが巧妙なのは、アメリカ政府が調達から排除しないことを認めてくれるのではなく、あくまでも各社が自主的に中国通信企業5社を排除することを求めている点です。
つまり、これによれば、アメリカ政府と取引を考える会社は、あらかじめ自主的に中国通信企業5社との取引を無くしておく必要があります。
そしてその排除条件の範囲は、自社だけでなく、取引先にも及ぶ「可能性」があります。
どうでしょう。アメリカ市場を捨ててでも中国で一花咲かせようという「漢(おとこ)」な企業でもなければ、自主的に中国通信企業5社を排除する安全策に傾くことは想像に難くありません。
また、取引先がアメリカ政府から排除されて迷惑をかけることを恐れる子請け企業、孫請け企業も、これらの中国企業との取引を控えることになるでしょう。
さらにいえば、リストに挙げられた中国企業だけでなく、それ以外の中国企業も同じ国内でリストに挙げられた企業と取引がある可能性があるのだから、ことはめちゃくくちゃに複雑です。
中国国内の企業同士は、海外の企業より取引関係がある可能性は高くなります。
そうなると、海外の企業は、自社が取引している中国企業がリストに挙っていないからといって、安心できません。
「とにかく安全第一。中国の会社と取引するのは止めておこう」となって、これら5社だけではなく、すべての中国企業が忌避されるようになる可能性が高くなります。
これは、うまい仕掛けだと思います。。
いまやサプライチェーンは世界中でつながっています。
自社は直接アメリカ政府と取引していなくても、取引先、その取引先、さらのその取引先と拡大していくと、どの企業もアメリカ政府の調達に関係している可能性があるからです。
つまり、これは、中国企業全体との取引を止めさせる政策だということです。
この政策を掲げたのが、世界一の大市場であるアメリカです。
この政策によって、世界中の企業が「チャイナリスク」におびえることになったわけです。
さて、韓国の話に戻ります。
アメリカは、今度のG7で中国包囲網を確立しようとしています。
今回、アメリカはそこに韓国を招待しました。
韓国は、そもそもGDPに占める輸出依存度が高く(約49%。日本は約14%)、中でも対中国が1/4を占めます。
いわば中国は大のお得意様です。
韓国を「二股外交」と悪しざまにいう人がいます。
状況としてはそうと言えないこともありません。
しかし、韓国はこのように中国無しでは経済が成り立たない構造になっているため、対中国制裁で姿勢が定まらないのは理解できないでもありません。
たとえば、2017年にアメリカの要請に応じて新型THAAD(サード)迎撃ミサイルを配備し、中国の猛反発にあって腰砕けになったことがあります。
この時、文大統領は「(新型THAAD(サード)迎撃ミサイル配備は国防省が勝手に進めたことで)自分は知らなかった」と言って逃げました。
アメリカは、この韓国を自陣に縛り付けようとしています。そのために、今回のG7を利用するつもりなのだと思います。
G7への参加によって、韓国はアメリカの中国排除に強引に乗せられて、独立した国家としての外交政策上の自由を失うことになるでしょう。
外交政策上の自由を失わない方法は、アメリカの中国排除に毅然と逆らうことですが、これは相当のリスクを伴います。
韓国に近い日本の政治家や要人は、すぐこのカラクリに気づいたので、韓国の参加に懸念を表明したのだと言えます。
一方で、この枠組みに韓国を縛ろうとするアメリカ側の日本人も、同じことを言いました。彼らの発言には、韓国を感情的にさせて逃げ道をふさぐ効果がありました。
いずれにせよ、G7に参加する(させられる)ことにおいて、韓国は選択肢を無くすことになります。
さて、中国経済を世界のサプライチェーンから切り離して孤立化させるアメリカの戦略は、G7で第2段階目の仕上げを迎えます(第1段階は、現在行っているアメリカ独自の経済制裁です)。
このG7で、アメリカは(どのような中身になるか、まだわかりませんが)中国(共産党)を排除する共同声明を採択させようとするでしょう。
今のところ、アメリカの戦略には先進諸国のほとんどが同調しており、ほころびは見られません。
では、これから先はどうなるのでしょう。
最悪のシナリオは、中国への武力攻撃だと思います。
アメリカの研究機関の中には、米中の武力衝突が生じる可能性を75%と見ているところもあります。
7月25日のニューヨークタイムズ本紙、そして翌日のロサンジェルスタイムズは、アメリカが、中国が自国領土と主張する南沙諸島の埋め立て地への攻撃を計画していると報じています。
そして、この計画はアメリカ軍だけでなく、オーストラリア軍と日本の自衛隊が加わって実行されるのではないかとの見方も示しています。
もし、こうした事態になれば中国は必ず反撃するはずです。
この反撃は南沙諸島に留まらないと思います。南沙諸島での反撃に加えて、台湾にもほぼ同時に武力侵攻する可能性が高いのではないでしょうか。
本来ならば2か所で同時に戦端を開くのは戦略的に難しいはずですが、現在も中国空軍が頻繁に台湾領空を飛行していることを考えれば、おそらくそうなると思います。
なぜなら、南沙諸島に「駐留」する部隊と、台湾周辺に展開する舞台は指揮系統が異なるからです。
軍隊は、平時においてはその存在自体による抑止力に価値があります。
しかし、いったん戦端が開かれると、戦うことが唯一の存在理由であり価値になります。
そしてその価値は一国の内部で相対的なものです。
同じ国の軍隊で、一方が戦闘状態にあるのにもう一方が抑止的状態を長期に渡り維持することは難しいと思います。
それは、原理的には戦国時代の「手がら」競争に近い心理状態だと言えます。
戦場の心理として、片方のエリアで戦闘状態になれば、もう一方でも戦闘を始めるだろうということです。
南沙諸島に「駐留」する部隊と、台湾周辺に展開する舞台は指揮系統が異なりますが、最終的な指揮権は軍事委員会を掌握する国家主席に集約されています。
しかし、一般的に、一度交戦状態になった後の具体的戦略が最高権力者に諮られることはまずありません。
そんなことをしていたら、目まぐるしく変わる戦場の状況では間に合わないし、最高権力者はそれほど実際の戦闘に詳しくないからです。
ということで、中国はいったん戦闘モードに入ると複数の場所で交戦状態になると思います。
それは、戦略的にも戦術的にも中国にメリットのあることではありません。
私の私的情報エージェントである「お茶の間特派員」は、アメリカの中国に対する武力攻撃は大統領選挙までに行われると分析しています。
この分析が確からしからんことを祈りたいと思います。
※「戦争」には、法令上の「戦争」と、比喩表現としての「戦争(=「経済戦争」「人権戦争」等)」があります。
文中、米中間で行われようとしているのは「戦争」です。ここでいう「戦争(=The War)」は、アメリカ国内で正式に用いられている表現です。
ただし、国際法ではこの意味における「戦争」は違法とされているため、わが国を含む諸国では「武力衝突」「武力紛争」等の表現が用いられます。